清水理史の「イニシャルB」

遅いのはどこだ? フレッツ 光クロスのプロバイダー(VNE)変更で1.3Gbps→6Gbpsと大幅高速化を実現した経緯
2025年4月28日 06:00
先日、本連載で、筆者宅の光回線を10Gbps対応のフレッツ 光クロスに変更した話を掲載した。移行はスムーズだったものの、インターネット上の速度測定サイトで1.3Gbpsほどと、速度が物足りないことが課題となっていた。今回は、そんな速度を改善した経緯を紹介する。
どこが遅いのかを判断するのが難しい
10Gbps対応のフレッツ 光クロスなのに、実効速度が1.3Gbps前後。
そんな状況となっていた筆者宅の回線。原因の切り分けとして、NTT東日本に連絡し、ONUとルーター(XG-100NE)の交換もしてもらったが、速度は上がらない状況となっていた。
回線速度が遅いと感じる場合、どこに原因があるのかを利用者が判断するのは簡単ではない。
速度が遅い場合の対処方法などが、事業者のウェブサイトに掲載されているケースもあるが、そのほとんどは次のような家庭内のLAN環境の改善となる。
- ルーターやホームゲートウェイの10Gbpsポートを使っているか?
- ルーターを自分で用意した場合、10Gbpsに対応しているか?
- LANケーブルはカテゴリ6A以上か?
- スイッチを経由する場合、スイッチは10Gbps対応か?
- 計測に利用したPCは古くないか?
- PCは有線でつながっているか? 無線でつながっているか?
- 有線の場合、PC側のLANポートが10Gbpsに対応しているか?
- 無線の場合、Wi-Fi 6で2402Mbps、Wi-Fi 7 160MHz幅で2882Mbps、320MHz幅で5774Mbpsなので、どうやっても10Gbpsは出ない
- 混雑している時間帯(夜9:00前後)ではないか?
家庭の場合、10Gbps環境を整えるハードルの方が高いので、こういったチェック項目が提示されるのは分かる。だが、筆者宅もそうだったが、上記をクリアしていても遅いというケースは考えられる。
以下は、IPoE協議会のウェブサイトで公開されているIPv6 IPoE方式の接続図だ。左側の「IPv6 IPoE方式」の図に注目してほしい。
先述のチェックリストで確認したのは、上図における「宅内環境」の部分だ。これよりも先については、利用者は状況を把握することは困難だし、何か対策をすることもできない。
一応、以下にリンクを示す「SPEED TEST Powered by RBB SPEED TEST」フレッツ網内とインターネットの速度を分けて計測できるサイトもあるのだが、フレッツ 光クロス向けとなっておらず、正しく計測できない。フレッツ 光クロスに対応してくれれば、フレッツ網までの設備(自宅のONUなども含む)に問題があるのか、その先、VNEやインターネット側に問題があるのかを切り分けることができそうなので、残念だ。
▼SPEED TEST
Speed Visualizer
(http://www.speed-test.flets-east.jpからもフレッツ網内の計測が可能)
光コラボじゃないからできるお気軽プロバイダー変更
というわけで、筆者宅の回線が遅いことについては、家庭内とNTT東日本責任部分に原因はなさそうなので、その先を何とかすることにした。
その先といえば、利用中のプロバイダーということになるのだが、筆者は回線とプロバイダー契約を別々に申し込む従来方式で利用しているため、費用はかかるものの、プロバイダーの変更は簡単な手続きでできる。現在のプロバイダーに問い合わせをする手もあるが、仮に帯域に一定の上限が設けられていたとしてもユーザーとしてそれを知ることはできない。むしろ、サポート窓口で、LAN側のチェックから始められ、無駄に時間がかかるのももったいない。それならば、とりあえずプロバイダーやVNEを変更して様子を見てみる方が早いという判断だ。
というわけで、新たに契約するプロバイダーを探すことにした。と言っても、これも以前に紹介した通り、プロバイダーサービスのみを単体で契約できる事業者は数が少なくなっており、特にフレッツ 光クロスの10Gbps対応となると、数えるほどしかない状況にある。
今回は、そんな中から「ASAHIネット」を選択した。
理由は、VNEを変更して速度の状況を確認してみたかったからだ。以下は、前掲の図と同じIPoE協議会で公開されている資料「IPoE方式とVNEの役割」に掲載されている図だ。
VNEは、Virtual Network Enablerの頭文字を取ったもので、IPv6 IPoE環境において、ネットワーク設備の管理などを担う重要な役割を持つ事業者となる。主なVNE事業者を以下に挙げる。
- BBIX株式会社(OCX光)
- インターネットマルチフィード株式会社(transix)
- 株式会社JPIX(v6プラス)
- ビッグローブ株式会社(IPv6オプション)
- 株式会社朝日ネット(V6コネクト)
- エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(OCNバーチャルコネクト)
- アルテリア・ネットワークス株式会社(クロスパス)
現状、プロバイダーは、IPv6 IPoEサービスに関しては基本的にVNE事業者を利用して、ユーザーにインターネット接続サービスを提供する形態が多く、IPv6 IPoEサービスに関しては集客や契約の取次、課金管理、サポート対応などが主な業務となりつつある(もちろん、従来型のPPPoE接続サービスを提供する事業者も多い)。
しかしながら、中には自らもVNE事業者としてサービスを提供するプロバイダーも存在する。ASAHIネットもそんな事業者のひとつだ。せっかく変更するなら、VNEごと変更して状況が改善するかどうかを確認してみたかったためとなる。
不通期間を最小限にできる
移行はスムーズだった。手順としては、現状のプロバイダーの解約→ASAHIネットの契約だけなので、特に難しいこともなかったが、ポイントとなるのは解約と新規契約のタイミングを合わせることだ。
IPv6 IPoEサービスの場合、以前の契約が残っていると、新しい契約に変更することができない。現状のプロバイダーのサポート情報を見ると、解約日の翌日午後から新しい契約ができるとなっていたため、このタイミングを合わせる必要があった。
このため、ASAHIネットの開通希望日を解約日の翌々日に設定して、申し込みをした。不通期間を避けるのは難しそうだが、うまくタイミングを合わせれば最小限にすることはできるだろう。
フレッツジョイントで自動設定だが無効化も可能
申し込みが完了したら、あとは開通日を待つだけでいい。ASAHIネットの場合、フレッツジョイントによって対応ルーター(XG-100NE)に対して、DS-Liteの設定が自動的に適用されるしくみになっている。
このため、待っていれば自動的に使えるようになるため、ユーザーは特に設定などをする必要はない。
ただし、筆者の場合、フレッツ 光クロスの回線を主にテスト用(検証用)として利用しているため、できればDS-Liteの設定はXG-100NEではなく、テスト用のルーターで使えるのが望ましい。
実際に開通してから確認してみたところ、XG-100NEの設定画面からDS-Lite(v6コネクト)の接続を無効化できるようになっていた。これにより、自動設定に対応している市販のルーターを使って接続することも可能だ。好きなルーターを使いたいというユーザーでも安心して利用できるだろう。
なお、本稿を執筆しているタイミングで、同社からリリースされたニュースに興味深いことが記載されていた。RBB TODAYが主催するアワードを受賞したという内容だが、最後に固定IPアドレスオプションをフレッツ 光クロス向けに提供することも予定している、と記載されている。
これは非常にありがたい。ぜひ個人向けサービス、それもプロバイダー契約のみの「フレッツ 光クロスコース」でも使えるサービスとして提供してほしいところだ。
速度が大幅に改善
肝心の速度だが、大幅に改善された。以下は、空いている早朝5時台と混んでいる夜9時前後でSpeedtest.netの結果を比較したものだ。いずれも、フレッツ 光クロス回線で、10Gbps対応のアダプターを装着したPC、10Gbps対応のルーターで計測した値となる。
空いている時間帯であれば6Gbpsオーバーで通信できることを確認できた。一時的にせよ、この速度を見られれば10Gbpsの回線にしたことを実感できる。
もちろん、常にこの速度で通信できるわけでなく、上記のように夜間、9時前後の計測では1~2Gbpsほどの速度になってしまうことはある。以前は、時間帯を問わず1.3Gbps前後だったので、混雑時は同じくらいの速度という印象だ。
もちろん、6Gbps出たからといって、実用シーンで何かが大きく変わることはない。むしろ、以前の常時1.3Gbpsでも困ることはなかった。
ただ、やっぱり「10Gbpsの回線を入れた」ということが一瞬でも実感できることは重要だ。10Gbps回線の威力を目にすることができれば、何に対して、余分に月額費用を支払っているのかを納得できる。
次はどのプロバイダーとVNEにしようか
というわけで、せっかく気軽に変えられるので、次はどのプロバイダーとVNEにしようかと模索中だ。
というのも、今回の実験で、NTT東西のフレッツに関しては、VNEやプロバイダーの違いがサービスの品質に大きく影響することがわかったが、肝心の違いを判断する手がかりがユーザーにないため、現状は、使ってみないとわからない(それでも筆者宅の場合というほんの一例に過ぎないが……)という状況にあるためだ。
いかんせん選択肢が限られるので、悩みどころだが、もう少し、プロバイダーとVNEを変えながら実験をしていきたいと思う。